2013年7月12日、午後9時30分
バービアーで気持ち良くホステスをいなしながら上機嫌で飲んでいたところに突然とけたたましい携帯電話の呼び出し音。
一瞬、我に返り携帯電話を耳にあてる。
そこにガラガラ声で少しの間何を言っているのか分からないようなせわしなく捲し立てる女の声、どこかで聞き覚えがある、少しの時間がバービアーでの世界から現実の場へと私を引き戻す。
10秒してからやっと何を言っているのか、誰からかかってきている電話なのかが理解できるようになる。
仕事でタクシーを頼んでいる会社の事務員からの連絡である。
内容は飛行機の到着から1時間以上経過しているのに目的のお客が税関から出てこないという連絡だ。
確か大阪から午後8時に到着するお客をこのタクシー会社にピックアップするように依頼してあったはずである。
そのお客が予定の時間を過ぎているのに他のお客が大体税関から出てきたのにうちの客だけが出てこないで苛立った運転手が会社に電話して本当にこの便で到着するお客で間違いないかの確認を会社に入れたのだろう。
すぐに頭の記憶回路が忙しく回転を始める。
本日の大阪よりの日本航空の便に間違いはない。
念の為にお客の携帯電話番号をこの時用にインプットしてある。
早速その日本の携帯番号に電話を入れてみる。
数回の呼び出し音でこの客が電話に出た。ラッキー!
すかさずお客様に問いかける。
「うちの運転手が到着ロビーで待っているのですが、お客様がお見えにならないので心配しておりますが、今どちらにいらっしゃいますか?」
するとお客から意外な回答があった。
「今、税関を出たところで係官に捕まりたばこの持込で税金をかけられている。その税金の額で揉めているところです」
「いくらの税金をかけられたのですか?」
「15万円です」
「え、何カートンで15万円なんですか?」
「5カートンです。すみませんが税関職員と変わりますから交渉してくれませんか」
「いえ、我々はお客と税関との間に入って税金の交渉をすることは禁じられていまして、それはお客様と税関で話し合って貰うしか方法がないんです」
「そうですか、分かりました大体相場はいくら位なんでしょう?」
「日本大使館からの情報ですと1カートン1万円位が相場と聞いていますが」
「もう少しで出ますからと運転手に伝えといて下さい」
それから運転手からもお客様からも連絡が無かったということは、ある程度のところで妥協が成立して運転手と到着ロビーで待ち合わせが出来てパタヤに向かったということであろう。
その後、このお客様とは会う機会がなくていくら税金を払って妥協が成立したのかは聞くことができなかったが多額の税金を払わされたことはまず間違いなかろう。
それにしてもタイの税関はやりかたが汚い。
持込をさせておいて(税関申告をしないということを承知で)税関を通過してから現行犯で現物を押さえ法外な税金を請求する。
予め飛行機の中とか、税関の前にでも張り紙をしてお客の注意を喚起するとか、ある程度の広報活動をしてからやるのは良いが、これは目くらまし捜査である。
お客はたまらない、一緒に来た団体に迷惑をかけるわけにはいかないし、また今回のように待たせてある運転手をいらいらさせたりもする。
必然的に税関との揉め事は早く解決して外に出たいという気持ちが働く。
そこでやる捜査には何か恣意的なものを感じる。
それにもうひとつタイの税関の人には言っておきたいことがある。
入国の時に15万もの税金を徴収したら、いざこれからという観光客は大枚15枚も抜かれてしまったらこれから何日間タイに滞在するか知らないが遊べなくなってしまう。
こんなやり方は良くない。
日本人は金持ちだから大丈夫とタカを括っているのと思うが、いくらなんでもその税額は観光客には大きすぎる。
もうひとつ大きな問題があって、ではその持ち込んだたばこを破棄するから税金もタダになるかと言えば、それは既に税関を通過してあって申告義務違反だからその手は使えないというわけ。
これが税関前で廃棄すれば問題は何もないのだが、まず実績を作らせておいてからの課税だから悪質と判断されるものもあるのだろう。
いや私に言わせればタイの税関の方がよっぼど悪質なのだが日本人は性格が善良で
真面目だからこの税金を払ってしまう。
これがファランと呼ばれる白人にはこういう捜査はしない。
せめて日本人、韓国人だけに適用している法律なのだから頭にくる。
私の友人でHISの日本語ガイドをしている者がいる。
7月で4件このような全く同じ捜査をやられて17万円、24万円と税金を払って入国したそうである。
ここでひとつ忠良な善良な日本人の為にアドバイスをしておきたい。
日本と違ってタイ税関は税金をかけるときに人の顔色を見て税金額を決めるということ。
相手によって金額が違うのだ。
法律的には日本大使館が言っているように1カートン1万円の罰金が妥当なところだが相手がびくついていたり善良な人であったりすると、そこに自分のポケットの税金までプラスして請求する。
タイにおける税金はあくまでも交渉と思って間違いはない。
右のポケット(政府)にはいくら、左のポケット(個人的ワイロ)はいくらというようになっているので、まずは落ち着いてしっかりと交渉をすべきである。
恥ずかしいことはない、清々堂々と自分の所見を言い、それでも納得しないときには上部機関や税官吏を替えても交渉すべきである。
時間を気にしたらいけない。
時間を気にすれば必ず負ける。
徹夜で交渉する位の気持ちになれば相手もある程度の金額で落ち着くと思う。
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